「右と左、どっち?」と聞かれて、あなたは瞬時に正確に答えられますか?
「そんなの簡単だ」と思う人がほとんどでしょう。しかし、「右とは何か」「左とは何か」を、ジェスチャーや目印なしで、言葉だけで完璧に説明できるかと問われると、多くの人が戸惑ってしまいます。実はこの「左右の説明の難しさ」は、単なる雑学ではなく、心理学や物理学にまでまたがる奥深い問題なのです。
なぜ左右の説明は難しいのか?
私たちが「上・下」や「前・後」を簡単に説明できるのは、「上」は頭のある方向、「下」は物が落ちる方向、「前」は目のある方向、と身体や物理法則に基づいた絶対的な基準があるからです。
しかし、「左・右」には、そうした絶対的な基準がありません。
- 「お箸を持つ方が右」
- 「心臓がある方が左」
といった説明は、文化や個人の身体構造に依存した相対的なものに過ぎません。宇宙人や、私たちとは全く異なる身体を持つ存在に、これらの説明は通用しませんよね。
科学の世界も悩ませた「オズマ問題」
この「左右を言葉だけで伝えられるか?」という問いは、科学の世界では「オズマ問題」と呼ばれ、長らく物理学者を悩ませてきた難問です。
もし、宇宙人に左右を伝えるために「原子の構造」や「回転の向き」などの物理現象を伝えたとしても、鏡に映したような「逆の世界」では、全ての物理現象が鏡像で起こってしまうため、やはり「どっちが右か」を言葉だけで区別することはできませんでした。
しかし、1956年、物理学者の楊振寧(ヤン・チェンニン)博士と李政道(リー・ツンタオ)博士が、ある種の素粒子の崩壊において、物理法則が鏡像の世界と非対称になる、つまり「パリティ対称性が破れている」ことを予言し、後に実験で証明されました。これによって、物理法則の中に初めて「右と左を区別できる」絶対的な手がかりが見つかったのです!
左右の判断が苦手な人がいる?「左右盲」とは
左右の判断に極度に時間がかかったり、混乱したりする状態は、俗に「左右盲(さゆうもう)」と呼ばれています。これは病気や障害ではありませんが、日常生活で不便を感じる人が少なくありません。特に、
- 左利きを右利きに矯正された人
- 女性(複数の研究で、空間認識能力との関連が指摘されていますが、科学的根拠はまだ決定的なものではありません)
に比較的多いと言われています。幼い頃に左右を覚える際、「利き手」を基準にして教えられることが多いため、利き手が曖昧になったり矯正されたりすると、絶対的な基準を失って混乱しやすくなるのかもしれません。
まとめ:左右の概念を見直そう
私たちの日常で当たり前のように使っている「右」と「左」の概念は、実は極めて相対的で、複雑で奥深いものだったのです。もし、左右の判断に迷うことがあっても、それはあなただけではありません。かの有名な物理学者たちも悩ませた難問なのですから!
日常で左右を教える時は、「目印(ほくろ、時計、絆創膏など)」や「クロックポジション」といった具体的な基準を用いると、左右盲の方も迷いにくくなります。この機会に、ご自身の「左右」への理解を見直してみてはいかがでしょうか。


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